日差しの気持ちいい家~戸建てのお宅探訪ダイアリー vol.2 大塚美紀さん

2021年8月31日

家には人生への想いがあらわれると言います。高い買い物であり、多くの時間を過ごす家だから、少しでも良いものにしたいものです。 それが戸建てならなおさら。
しかし、0から自分や家族の希望を設計図に織り込んでいくのはとても労力がかかるし、分からないことだらけです。

そこで戸建ての先輩に体験談を聞くこの企画。第2回はファッションブランドのディレクターを務める大塚美紀さんにお話を伺いました。

大塚美紀さんプロフィール

自身が手がけるファッションブランド「marihoja(マリホジャ)」のディレクターを務める。実は前回ご出演の山中島あずささんとはお仕事のパートナー。趣味は家族で出かけるキャンプなどのアウトドアと家いっぱいにあふれる植物を育てること。Instagram

お宅データ

・エリア:東京都郊外
・築年数:4年
・土地面積:75
・延床面積:130平米
・建築費:2800万円
・間取り:3LDK+サンルーム
・世帯構成:夫・妻・長女(小4)・長男(小1)

もともとは旦那さんの会社があった土地

サーフボードは旦那さんのもの

——このエリアにはもともと縁もゆかりもなかったと聞きました。
そうなんです。以前は引っ越しのペースが2〜3年に一回で、湘南や大田区など5ヵ所ほど移り住んでいました。
子供が小学校に入学するタイミングで、もともとは夫の実家で、その後は経営する会社があった土地が移転で空くことになって。お義母さんがここに家を建てては?とすすめてくれて、ここに移り住むことになりました。夫の家族にとっては長く縁のある土地なので、運命めいたものも感じたのかもしれません。

——実際に住んでみていかがでしたか?
少し駅から遠いところは気になりますが、緑が多くてゆったりしていて気に入っていますね。

涙した日もあった住宅ローン申請〜工務店決め

家の中には大塚さんが好きな海外製の雑貨や小物があふれています

——土地が決まった後はスムーズに進んだんでしょうか?
それが全然で(笑)。当初はある工務店から見積もりを取りながら、並行して住宅ローンを申請していたんです。でも、千葉にもサーフィン用の家を持っている関係で、希望とかなりの開きがある額しか審査が通らないというトラブルが起こってしまったんです。
今だから笑って話せるんですけど、当時は「半年もかけて構想を練ったのに建たないなんて…」と泣いたこともありました。審査が通った額だと家の規模を小さくするしかなかったんですが、どうしても妥協はしたくなかったんです。

そこで、半年間打ち合わせを重ねた工務店を諦めて、予算が少なくても希望が叶う別の工務店を探すことに。結果的にお義母さんの知り合いの街の小さな工務店にお願いすることになりました。

——なんというか波乱万丈ですね…。
バタバタはこの後も続きます(笑)。お願いすることになった工務店は住宅に強いわけではなかったので、デザインや建材選びなど、ひとつひとつ自分たちから希望を出して決めていく作業をしました。
もともと固めていた理想のイメージをファックスで工務店に送ったり、着工後も行ける日はなるべく毎日現場に行って打ち合わせや希望を伝えたり。私が自営業だからできる動き方ですが、とことんこだわりました。

日差しが気持ちよくて、植物が生き生きとした家

——玄関を抜けるとすぐリビングですね。窓が多くて開放的です。
帰ってきた家族がリビングで顔を合わせる動線にしています。共働きということもあって、リビングでの団らんは大切ですね。キッチンと繋がりのあるスペースなので、料理をしながらでも会話ができます。
窓にはカーテンをつけず、日当たりが良くオープンな空間に。

リビングの逆側はコンクリートブロック風のタイルを貼っています。
湿気に弱い素材だったみたいで、ところどころ風化しているんですが、かえってそれが味になって気に入っています(笑)。

子どもがふたりいて部屋がゴチャゴチャするのを防ぐためにも、リビング収納はたっぷりにしました。
ここにおもちゃや普段使わない荷物、掃除道具などを詰め込んでいます。

 

——ガラス張りのこの空間も気持ちいいですね。
窓の外のスペースはもともとウッドデッキにしようと思っていたんですが、寒い日でも活用できるようにサンルームにすることにしました。
夏は朝ごはんを食べたり、バーベキューをしたり、冬には寒さの弱い植物の飼育場所にしたり。この家のポイントとも言えるスペースですね。

——キッチンからサンルームに抜ける途中にある一角も素敵です。
我が家では「コンサバトリー」と呼んでいるスペース。植物をたくさん置いたり、お気に入りの雑貨を飾ったり、私の好きなものが集まっています。
もともと母が植物好きな人だった影響もあって私もグリーンが大好き。この家のひとつのコンセプトとして「植物が生き生き育つ空間」ということを考えていて、いろんなところで好きな品種を育てています。
ここのアーチは工務店の人と何度も相談して角度を決めた、こだわりと思い出が詰まった場所です。

——リビング奥のダイニングキッチンはウッディな雰囲気に目が行きますね。
ダイニングテーブルは、木工作家の高山英樹さんの作品です。ある日、分厚い天板のテーブルがある家の夢を見て、それ以来そのイメージに似たテーブルを探していたんですが、一枚板だとどうしても高価になってしまって。そんなときに見かけた高山さんの作品に惹かれてオーダーさせてもらいました。
子供が結婚しても使えるよう、どっしりとした造りにしています。

——キッチンも使いやすそうで気になります。
実はこれ、いわゆる既製品のシステムキッチンで。そのなかでも安いモデルを探してきて、カウンターの外側には板を貼り付けています。蛇口や取っ手についても海外メーカーから取り寄せたものに取り換えたり、なるべくDIYすることで予算を抑えています。
カラフルな花瓶はモロッコのもの、照明と蛇口は真鍮で合わせたくてずいぶん探したことを覚えています。

妥協はせず、考え抜いてたどり着いた

——家のイメージを膨らますうえで、何か参考にしましたか?
もともとアパレルメーカーで店舗の内装を手掛けていたことがあるので、日常的にインテリアの洋書や海外のインテリアをよく目にしていたことが役立っていると思います。Pinterestもよく見ていましたね。

思い返してみると、ほとんど妥協せず家を建てられました。もう少し広くしたかったとは思いますが、それ以外は浮かばないくらい。
予算の都合で工務店を変えても、できるところはできるだけ自分たちで行うことで、手間はかかってもその分、愛着のある家になったと思います。

子どもも植物も気持ちよく育つ家

太陽の光が気持ちよく、とても居心地がいいところが印象的なお宅でした。何をお聞きしても愛着やこだわりが詰まっていて、真似したくなるポイントも多かったのではないでしょうか。

自分が大切にしたい価値観が定まれば、自然と理想の住まいも見えてくるもの。家を建てることは、人生をデザインすることなのかもしれません。

 

Interview & Text & Edit_Yasushi Shinohara