戸建てのお宅探訪ダイアリー vol.1 山中島あずささん

2021年3月30日

家には人生への想いがあらわれると言います。高い買い物であり、多くの時間を過ごす家だから、少しでも良いものにしたいものです。 それが戸建てならなおさら。
しかし、0から自分や家族の希望を設計図に織り込んでいくのはとても労力がかかるし、分からないことだらけです。

そこで戸建ての先輩に体験談を聞くこの企画。第1回はフリーランスモデル・ブランドPRとして活躍する山中島あずささんにお話を伺いました。

山中島あずささんプロフィール

『BLENDA』や『VERY』などの雑誌を中心にモデルとして活躍。男の子ふたりの母で、週末は自宅でBBQをしたり、キャンプに出かけるなどアウトドアがお好き。友人とともに素材と品質にこだわったオリジナルブランド「marihoja(マリホジャ)」も手掛ける。Instagram

お宅データ

・築年数:3年
・土地面積:40
・延床面積:140平米
・建築費:4500万円
・間取り:5LDK+土間
・世帯構成:5人と1匹(夫・妻・長男・次男・義母・ボストンテリア)

旦那さんの実家を建て替えた新居

——もともとは旦那さんのご実家だそうですね。
はい。結婚を期に私が夫の実家に移り住んで、かれこれ10年ぐらい暮らして、3年ほど前に思い切って建て替えました。
ふたりの子どもが大きくなって家が手狭になることを見越して、現実的に夫が40歳になる前にローンを組んでおきたかったんです(笑)。

——他のエリアに転居する選択肢もありましたか?
それはなかったですね。結婚して約10年は住んでいたので街に愛着も湧いていましたし、長年同居してお世話になった義母と一緒に安心して暮らせるという意味でも他のエリアに移ることは考えませんでした。
シンプルに同じ場所で建て替えたほうが土地代を抑えられたということもあります。

家族と訪れる人の「楽しい」をイメージ

——玄関を入ったらすぐ土間があったり、2階のリビングやバルコニーが広々としていたり、すごく居心地のいいお家ですね。
もともと夫婦そろって人を招くことが好きで、毎週のように自宅でBBQパーティーを開いていたんですよ。だから「自然と人が集まるような家」を作ることに重点を置いて工務店との打ち合わせを進めました。
友だちやお客さんがくつろげるようにリビングやバルコニーを広く取ったので、新型コロナウイルスが感染拡大する前は正月の餅つき大会で50人集まったことも(笑)。

さすがに今は以前のように人を招けませんが、在宅ワークが増えても天気が良い日はバルコニーで作業して気分転換したり。この間取りにしたことで閉塞感を覚えずにステイホーム期間を乗り切ることができていると思います。

——家のイメージを固めるときに参考にしたメディアはありますか?
アイデア探しに役立ったのは「Houzz」というアプリです。
国内外の家づくりに関する事例写真がたくさんストックされていて、自分好みのデザインを見つけたらどんどん保存することができるんです。そうしているうちに自分たちの理想が可視化されるので、工務店との打ち合わせでイメージのすり合わせをスムーズにすることができました。サンプル探しは私よりも夫が頑張ってくれたんですけどね(笑)。

それと一緒にアパレルブランドを手がけているパートナーから刺激を受けることが多かったです。彼女もちょうど同じ時期に家を建てていて、インテリアのこだわりが強くて専門的な知識も持っているので、最高の相談役でしたね。

——内装面で強いこだわりを注いだのはどこですか?
キッチンだけは予算も夫の意見も気にせず、自分の理想を詰め込むことにしました。まず市場に出回っている中でも一番大きなサイズの食洗機を置いて家事の効率化を最優先。

シンクも食器をドサッと入れられるサイズ感を特注でつくりました。お客さんがいるリビング側からは見えない位置に食器用洗剤の収納を設置するなど、細かなこだわりをどんどん採用したら、建築費全体の10%以上をキッチンが占めることになってしまいました。

——リビング周りにはどんなコンセプトが込められているんでしょうか?
オープンキッチンにしたのは料理をしながらリビングにいる家族やお客さんとコミュニケーションを取りたかったから。
最初に夫婦でしっかり家族や友人に楽しんでもらうというコンセプトを固めたことで、「思い切って予算をつぎ込むポイント」と「妥協するポイント」の判断がしやすかったと思います。

——バルコニーには大小の植物が並んでいて、ホテルのテラスのような開放感あふれる空間ですね。
植物は完全に主人の領域で、私はノータッチです。あまりくわしくありませんが、海外原産の耐寒性がある植物をメインに育てているそうです。
お互いにこだわりたい部分には口を出さないことが、家づくりを円滑に進めるポイントかもしれませんね(笑)。

こちらがロストラータ

ぶち当たったカベと乗り越え方

——では、本当は実現したかったけど諦めたことを教えてください。
本当はもっと2階のバルコニーを奥行き広くして、その下にあたる1階に屋根付きのガレージをつくりたかったんです。でも建ぺい率の規制を超えてしまうので、諦めざるを得ませんでした。

あとは、予算を抑えるために壁紙を部分的に安価なものにしたのですが、そこは本当に悔やんでも悔やみきれなくて…。
自分たちがイメージしていた仕上がりとは違ってしまって、竣工当日に剥がしたくなってしまったくらいです(笑)。壁紙は面積が小さいサンプル品を見るのと、壁一面に貼られた状態を見るのとでは全然イメージが変わるので、もっと慎重になるべきだったかもしれません。

——どんなに打ち合わせを重ねても、多少は「思ってたのと違う」があるものなんですね。
実はキッチンも最初はカウンター形式で食事できるようにつくったんですが、住み始めてみたらあまり必要のない機能と気づいて。後からカウンターを排除して収納スペースにリフォームしたんです。
リビングの収納棚も、つい最近作り変えたばかり。もともとは一枚板のカウンターで子どもの勉強スペースのつもりだったんです。でも、使われないどころか雑多になりがちだったので、収納スペースを増やすことに。
こんな感じに後から必要に応じてプチリフォームできるのも戸建ての魅力だと思います。

お義母さまの部屋へは裏玄関からも入れるように配慮

——1階と3階にはどんなスペースがあるんですか?
1階には土間と義母が生活する部屋があります。土間は多目的スペースで、夕方は子どもが友だちと一緒にワチャワチャしていることもありますし、夜は夫が一人で趣味の時間を楽しんでいることも。
義母の部屋にはキッチンも備わっており、2世帯住宅のような感覚で同居しながらも適度な距離感を保てるようになっています。

3階でこだわったのは光を多く取り込める位置に窓を設置したこと

3階は夫婦の寝室と子ども部屋があります。狭いスペースの中でも家族が朝起きてリビングに向かうときに日差しを受けながら開放的な気分になれるように心がけました。
最初は3階をリビングとバルコニーにして2階を子ども部屋などにしようと思っていたのですが、それだと子どもが帰宅してからリビングに上がって来ないかもしれないなと。家族が自然とひとつの場所にに集まる動線を重視して、現在のレイアウトにしました。

——家づくりの過程でいちばん悩ましかったポイントはどこですか?
このエリアは準防火地域に指定されているので、窓や玄関の選択肢が少なかったことですね。基準を満たす製品は思ったよりも値段が高く、予算を圧迫するひとつの原因になりました。

あとは、毎週のように打ち合わせを重ねることが体力的にハードで…。だんだん、どうでも良くなってくるんです(笑)。
それでも、義母との意思疎通を怠らないようにすることは気をつけていました。夫も含めて生まれ育った家を建て替えることにナーバスになるのは当たり前なので、疲れていてもコミュニケーションを怠るとすれ違いが生まれてしまうかもしれないので。

気になる「お金のこと」

——ちなみに建設費用は住宅ローンで賄ったのでしょうか?
はい。生活費は折半していますが、住宅ローンは主人が単独で組んでくれています。
夫の希望でガンになってしまった場合に、ローン金額の半分が免除されるプランを選びました。「全額保証にしたら復帰する気力がなくなって、病に負けてしまいそうだから」とのことです。

もちろん長期ローンを組むのは不安もありましたが、子どもの教育費など、不安要素を挙げたらキリがないので。綿密に先々のマネープランを計算したというよりは、とにかく勢いで決めた感じです。

——すごく大きな買い物ですから、やはり最終的には「勢い」が必要ですよね。
月々の管理費で外壁工事などを賄ってくれるマンションと違って、戸建ては維持していくのが大変な部分があります。
でも、私たちの場合はここに住み続けたいという気持ちが強くて、いずれ子どもたちに受け継いでいくためにも、いつか大規模な建て替えやリノベーションをすることは必然だったので。自分たちを勢いづける要因はそろっていたので、「覚悟を決めた」という感覚かもしれません。
建て替える決断をして、今は本当に良かったと思っています。

家族もお客さんも心地いい家

休日にお邪魔したにもかかわらず、ずっと笑顔で対応してくれた山中島さん。インタビューに付き添ってくれた旦那さんもフランクに接してくれるので、ついつい長話してしまいました。居心地が良いから、また来たくなる。ご夫婦のコンセプトをリアルに実感することができました。

自分が大切にしたい価値観が定まれば、自然と理想の住まいも見えてくるもの。家を建てることは、人生をデザインすることなのかもしれません。

 

Photo_Takumi Shinodago relax E more) Interview & Text_Satoshi Asahara Edit_Yasushi Shinohara