「移住したら、誰よりもママがキラキラ輝いていた」シェアキッチン・湘南お菓子部ICHI宮坂さんの神奈川移住体験

2022年11月22日

都会を離れて自然豊かな場所で暮らす──移住を希望する方が最近増えてきています。一方で、新しい世界に飛び込むことに憧れつつもなかなか一歩が踏み出せないという方も少なくないのではないでしょうか。

では実際に移住を実現された方は、どのようなきっかけで移住をし、どのような生活を送っているのでしょう。今回は、都内から神奈川県二宮町に移住したシェアキッチン・湘南お菓子部ICHI宮坂里沙子さんにお話を伺いました。

宮坂里沙子さんプロフィール

宮坂里沙子さんプロフィール

 

埼玉県川越市で生まれ、2歳から千葉県市川市で生活。結婚を機に東京都町田市に新築マンションを購入し、夫と3人の子どもと不自由なく暮らしていたが友人のSNSをきっかけに移住を決意。神奈川県二宮町に移住後、湘南初のシェアキッチン「湘南お菓子部ICHI」をオープンし、現在は20人近い部員と共に二宮町で憩いの場を提供している。

不自由なく暮らしていた移住前の生活。移住のきっかけは友人のSNS

 

結婚を機に、東京都町田市の多摩境に新築マンションを購入した宮坂さん。3人の子どもにも恵まれ、不自由なく幸せに暮らしていたと当時を振り返ります。

「何でも揃っていたので、特に生活で困ることはありませんでした。住んでいたのは300世帯規模の大きなマンションだったので、少し窮屈な感覚はありましたね。不自由はないけど、物凄く満足もしていない感じ。私の人生って、このまま終わっていくのかな?なんて考えていました」

そんな時、宮坂さんの目に止まったのが友人のSNSでした。

「葉山に暮らす友人が毎朝犬を連れて海岸を散歩している姿をSNSにアップしていたんです。率直に羨ましいと思いました」と宮坂さんは話します。

「私にとっての海は、1年に1回イベントで訪れる場所。それを友人は日常に取り込んでいました。友人に『なんて羨ましい生活!』とコメントをすると、『いつでもあなた次第でその生活は手に入れられる』と言われたんです。1年に1度の楽しみを毎日のものにしていいという気づきは、私にとって衝撃でした」

こうして宮坂さんの移住計画は始まりました。

移住に対する家族の反応。最も不安だったのは子どものこと

 

移住をしたいと思っても、家族に反対され断念する話も珍しくはありません。宮坂さんの場合は、どうだったのでしょうか。

「マンション購入から4年しか経っていなかったので反対されるかなと思いましたが、夫は意外と前向きでした。長期的なプロジェクトの仕事に携わっていたのですが、ちょうど一区切りついたタイミングで、もう少しサイクルが早くて成果が見える仕事に転職したいと思っていたようです。

一番不安だったのは、子ども達のこと。小さい頃から一緒に過ごしてきた友だちとの関係を、自分の都合で奪ってしまうのではないかと思い、罪悪感がありました。
でも子どもは本当に柔軟で、1ヶ月も経てば新しい友だちができるんですよね。当時、移住を嫌がっていた息子は現在6年生になりましたが、今は『ココから絶対出たくない』と言っていますよ」

最初は不安があった宮坂さんですが、計画を立てる中で前向きな気持ちになれたといいます。

「子どももいるし、マンションも買ったばかりだし……とネガティブなことも考えましたが、やっぱり『私の人生ここで終わっていいのかな』という想いが私を突き動かしてくれました。タイミングは子どもの入学時期を考えて、一年で動こうと決めて。締切を設けると目に見えた目標ができるので、より一層移住計画も具体的に話を進めやすくなります」

確かに家を購入すると、これが終の棲家と捉える人は少なくないでしょう。しかし宮坂さんのように家を買ったことを縛りにするのではなく、気持ちは常に自由でいいのだと感じることが自分自身の背中を押してくれるのかもしれません。

移住して何が変わった?心境や暮らしの変化

移住して何が変わった?心境や暮らしの変化

 

こうして無事に神奈川への移住を実現させた宮坂さん。移住をしたことによって、心境や暮らしにどのような変化があったのでしょうか。

「海があって山があって暖かいからなのか、感情に素直な人が多いように感じます。今までの私は、なるべく注目されないように、人に何か言われないように生きなきゃと思っていたところがあったんです。でもこっちの人は、何でもズバッと言ってくるんですよ。見知らぬおばちゃんに急に怒られたりして、最初はびっくりしました(笑)。
でもそういう真っ直ぐな価値観にふれて、これまで自分がいかに武装していたかに気付かされました。武装を外したら本当の自分を出せるようにもなって、身も心も軽くなったように感じます。

また子どもの過ごし方も、東京とは全然異なります。この前相談会に来ていた方から、放課後に子どもを出かけさせる時は必ず携帯電話などを持たせた上で、大人同士で連絡をとりあっていると聞きました。ですがこっちの子ども達は、勝手に出て行って鐘がなったら帰ってきます。コミュニティが狭くてみんな顔見知りだから、何かあった時は全員で守るという環境なんです。だから子ども達ものびのび過ごしていますよ」と宮坂さん。

宮坂さん自身はもちろん、お子様たちも二宮町の豊かな自然と温かいコミュニティにすっかり溶け込んでいるようでした。

ママが楽しんでキラキラできる場所「シェアキッチン・湘南お菓子部ICHI」を発案

ママが楽しんでキラキラできる場所「シェアキッチン・湘南お菓子部ICHI」を発案

 

宮坂さんの移住後の暮らしに大きな影響を与えたのは、自ら発案した「シェアキッチン・湘南お菓子部ICHI」です。保育園のママ友から、『手作りクッキーを販売したいけどできない』という相談を持ちかけられたことがきっかけだったそうです。

「飲食店の経験がなかった私は、初めこそ『なんでできないの?』と思っていましたが、調べれば調べるほど抜け道のない業界だということを知りました。お菓子は口に入るものなので、資格や公的な許可を得た場所でしか作れません。それまではフリーでウェブデザイナーをやったり古着屋さんで買い付けをして服を売ったりと、許可がいらない仕事をしていたので、クッキー1枚を売るためにそんなに大金をかけなければいけないのか、と驚きました。100円・200円のクッキーを売りたいだけなのにコストパフォーマンスが悪いと思って、何かいい方法はないのだろうかと思いを巡らせました」

そこで思いついたのが「シェアキッチン」。“お菓子作りが大好きでも、制約があってお店を持つことができなかった方たちが営業許可有りキッチンを利用することでお店を持てる”をコンセプトに、湘南地域初のシェアキッチンをオープンさせました。

シェアキッチン

 

3周年を迎える現在は、製菓を販売するお菓子部のみならず、クラフト雑貨を販売するクラフト部やエステやマッサージを提供するBIKURASU(美暮部)など、幅広い部員が活動しています。

「夢は見るものじゃなくて叶えるもの」を信条に、移住という自らの夢を叶えた宮坂さんだからこそ、ママ達の夢を応援したいという気持ちを誰よりも強く持っているのかもしれません。「今では夢を持っている人の夢を叶えることが私の夢でもあります」と語る宮坂さんの笑顔がとても眩しく見えました。

移住に悩む人へ伝えたい!家族はこう説得する!

移住に悩む人へ伝えたい!家族はこう説得する!

 

宮坂さんはシェアキッチンのほかに、移住相談会や交流会なども積極的に行っています。そこでよく相談されるのは、「家族をどう説得したら良いか」ということだそうです。

「私の夫は移住してから半年ほど、都内の会社に通っていました。今は月に1回程度都内に通勤する時もありますが、ほとんど在宅ワークです。都内への通勤が多い方だと少し大変かもしれませんが、在宅との併用があれば問題ないのかなと思います。
移住を成功させるポイントは、『夫をいかにその気にさせるか』ということですね。住宅展示場に連れて行って、“実際にこういう生活が送れるんだ”ということを肌で感じてもらうと良いと思います。

また移住を検討している人は、そもそもネガティブな人がいないですね。『移住』という言葉を使っている時点で、人生を変えたいという想いが深層心理の中にあると思います。でなければ『引っ越し』という言葉を使うはずですから。
二宮町は移住者が多く、活気があるお店は移住者が経営していることも多いです。移住後に何をしたらいいかわからなくても、コミュニティの中から見つけることができるので、安心して検討できる場所だと思いますよ」

移住先を検討する際に確認すべき点はココ!

移住先を検討する際に確認すべき点はココ!

 

「お子さんがいる場合は、小学校の学区などのエリアも考える必要があります。私の場合はネットで調べても口コミはないし、友人もいないので学校に関する情報は皆無でした。町によっては相談をすると学校見学をさせてくれるところもあるようですので思い切って役場に連絡するのもありだと思います。

また私は移住時に新しく家を建てたのですが、今思えば1度賃貸に住んで、土地勘を付けたり、地域のことを色々と知った上で建てたほうがよかったかな、と思っています。
都内からの移住であれば日帰りで通える距離なので、何度も通っていろいろなお店に足を運んでみることをおすすめします」

宮坂さん曰く、お気に入りのお店を見つけたら、そこに通える場所に住んで、その土地が肌に合うかどうかで決めるのも良いのではないかとのことでした。

ご褒美だった旅行先やイベント行事を日常にできる神奈川移住

 

都内から神奈川への移住を実現したことによって、たくさんの変化があったという宮坂さんの暮らし。話を伺えば伺うほど、取材陣からも「羨ましい」という声が漏れるほどでした。

「移住をして休日の過ごし方も変わりました。都内にいる時は半年がかりの一大イベントだったBBQが、ここではその日に思い立って急に始めることができます。
スーパーのお刺身も本当に美味しいし、近くの牧場でお肉を買うので焼肉屋さんやレストランにも行かなくなりました。

また日帰りで箱根や熱海に行ったり、近くの海でボーッとしたり、都内にいた頃ご褒美に行っていた場所が、今は日常にあります。昔、会社に行くときに『熱海行き』の電車に飛び乗ってしまいたいと思っていたこともありましたが、今その電車に乗った先に自分がいるということがとても嬉しいです」と幸せいっぱいに語る宮坂さん。

二宮町のような豊かな自然やゆったりとした時間の中で暮らせることは、やはり都会にはない地方ならではの大きな魅力です。
宮坂さんのように自分らしい暮らしができる素敵な場所を、あなたも見つけてみませんか?