憧れの家庭菜園を実現するために!家づくりで確認しておきたい3つのポイント

2023年4月18日

「家を建てたら家庭菜園を始めたい」と理想があるものの、実際にはいつどうやって始めたらよいのか分からないという方も少なくないでしょう。家庭菜園はどのタイミングからでも始められますが、これから家を建てる方は家庭菜園を成功させるための“ポイント”を知っておくと役に立つはずです。

そこで今回は、苗専門の農場を経営する家庭菜園専門家の龍慶介さんに、家庭菜園を始めるために家づくりでやっておきたいポイントについてお話を伺いました。

龍慶介さんプロフィール

龍慶介さんプロフィール

自衛隊のパイロット、大手広告出版会社と異色の経歴を経て、10年前に農業の世界へ。“植物のプロとお客様をつなぐ”をコンセプトとした『てしまの苗屋』を立ち上げる。初心者の方に植物を育てることの楽しさを伝えたいと、苗の丁寧な育成はもちろん、購入される方への説明や相談にも積極的に対応。失敗しにくい苗の販売と育成に力を注いでいる。

戸建ての家庭菜園、庭とベランダどちらが良い?

戸建ての家庭菜園、庭とベランダどちらが良い?

戸建てで家庭菜園を始める場合、地植えとプランター栽培ではどちらが最適なのでしょうか。まずは、それぞれのメリット・デメリットについて龍さんに伺いました。

「お試し感覚で手軽に始めたい方は、ベランダでのプランター栽培がおすすめです。プランターは簡単に移動できるので、台風や大雨などがきた場合にも大きな被害がなく育てやすいのがメリットです。

まず1シーズンを通してプランター栽培を試してみて、自分の性に合っていると思ったら地植えを検討するのが良いでしょう。

地植えのメリットはプランターよりも収穫量が多くなる点や、管理が楽な点です。ただし一度家庭菜園を作ってしまうと、利用用途が限られてしまうため、長期的に取り組めるかどうか検討してから始めるほうが良いですね」

まず手軽に始めてみたい方はプランター栽培から、本気で取り組みたいなら家庭菜園を作るのが理想的のようです。

家庭菜園に必要な庭やベランダの適切な広さ

家庭菜園に必要な庭やベランダの適切な広さ

「家庭菜園に必要な広さは、何をどれくらい植えたいかによって変わります」と龍さん。

「庭の場合は、基本的に1平方メートルあたり2本の作物を植えられます。その間にコンパニオンプランツなどを一緒に植えることもできますが、メインとなるものは2本です。4本植えたい場合は、単純計算で2平方メートルが必要になりますね。

ベランダの場合は、棚を使ったり壁にかけたりして立体的に育てると省スペースで栽培が可能です」

つまり、庭がなくても、それほど広さがなくても、家庭菜園は楽しめるということ。では敷地の中で、どのような場所が家庭菜園に適しているのでしょうか。

家庭菜園に適した庭やベランダの場所

家庭菜園に適した庭やベランダの場所

龍さん曰く、家庭菜園に最も必要なのは日当たりと風通しだと言います。

「日中のうち最低でも4時間、日に当たっている場所であれば作物は育つと思います。そして、その時間が長ければ長いほど育ちがよくなります。

家の中では多くの場合、洗濯物を干すスペースが一番日の当たる場所に設計されています。そのため、洗濯物を干すスペースにするのか、家庭菜園を行う場所にするのかはよく検討したほうがよいでしょう。

もし家庭菜園に選んだ場所が日の当たりにくいところでも、日光があまり必要でない植物(品種)を選べば十分に育ちます。例えば、みょうがやアスパラガスなどは日当たりが多くない場所でも育ちやすい植物です」

家のどの場所で家庭菜園を行うか、そしてどの種類の作物を選ぶかは、家庭菜園を成功させるポイントだと言えるでしょう。

理想の家庭菜園を実現するために抑えておきたい家づくりのポイント

家庭菜園に必要なものは、土と水回りと道具の3つ。新しい家で家庭菜園を始めたい場合どのようなポイントを抑えておくとよいのでしょうか。具体的な進め方やポイントについて龍さんに伺いました。

1. 土づくり

土づくり

庭に家庭菜園スペースを設置する場合、もともと敷地に入っている土では作物が育たないため、栄養のある土と入れ替える必要があります。

「土づくりと聞けば作業が大変そうなイメージに聞こえますが、培養土を購入できますので、手軽に始めることも可能です」と龍さん。

培養土とは、特定の作物に合わせてあらかじめ用土や肥料が配合された土のこと。ホームセンターなどでさまざまな作物に合わせた土が販売されています。

しかし、すでに庭に土が入っている場合は土の入れ替えが必要です。以下の手順を参考に土づくりを行ってください。

<土づくり・土を入れ替える手順>

1.区画、広さを決める
2.20cm掘る、砂と石を分ける
3.砂に石灰(有機石灰や苦土石灰など)を入れる
4.約1週間、放置する
5.土が弱酸性(ph6〜6.5)になっているか確認する
6.堆肥を入れる
7.肥料を入れる

ベランダでプランター栽培を行う場合は、培養土を購入して使用しましょう。

2. 水回り

水回り

家庭菜園における一番のポイントは、水回りだと龍さんはおっしゃいます。まずは庭で楽しむ場合のアドバイスを伺いました。

「もし家庭菜園を始める予定があるなら、家の設計段階で水回りや配管の位置を確認しておきましょう。庭やベランダあるいはその近くに水回りがあると、毎日の水やりが各段に楽になります。

他にも、野菜を収穫して家の中に持って入る際、近くに水回りがあればさっと土を洗うことができるのも便利なポイントです」

ちなみに、配管の位置は庭の下を避けるのがよいそうです。土を耕すときに、鍬やスコップで配管に穴をあける心配がなくなります。

「もう一つ、家庭菜園では水はけのよい状態を作ることも重要です。水はけをよくするためには、畑でよく見られる畝(うね)を作る必要がありますが、いかにも畑という見た目になってしまうことに懸念する方もいます。

そこで最近では、ハーブや草花と組み合わせてポタジェと言われる家庭菜園を作る手法が人気です。見た目もおしゃれで、なおかつ便利な家庭菜園グッズがたくさん販売されていますので、ぜひホームセンターなどで探してみてください」

ベランダで楽しむ場合には、どのようなポイントがあるでしょうか。

「ベランダの場合も庭同様、水回りの設備があるに越したことはありません。最近は、水道がないベランダも多くありますので、ベランダに水道が設置できるかどうか確認しておきましょう。

さらに、3階建ての場合は何階で家庭菜園を行うかをあらかじめ決めておき、施工業者に相談する必要があります」

3. 農具専用の収納スペース

他にも、戸建てで家庭菜園を始める際に必要な準備はあるのでしょうか。

「家庭菜園を始める際には、使いかけの肥料や道具などを収納するスペース・物置があるとよいですね。これは、肥料などの臭いが気になることもあるため、他のものを収納する物置と分けたり、住居スペースから少し離れた場所に設置するのをおすすめします。

またコンポストを設置すれば家庭から出る生ゴミから肥料を作ることもできるので、“SDGs”を意識した動きも取れますよ。

家庭菜園に最低限必要な道具は、手袋とスコップ、ブルーシート、そして鍬。あと土を一から作る場合は酸度計やふるいがあるとよいでしょう。これら一式を収納できる場所があると便利ですね」

そのほかの注意点

そのほかの注意点

ベランダ菜園の場合にはもう一つ気を付けておきたいポイントがあるそうです。

「床の素材がコンクリートの場合は、注意が必要です。コンクリートは熱がこもりすぎるため、プランターを直接置くと熱で根痛みしてしまい育ちが悪くなってしまいます。対策としては、ウッドパネルなどの熱がこもらない材質を敷くか、床から少し浮かせた状態で栽培することをおすすめします。

また、夏場は人間でも立っているのが辛いほどの猛暑日になることがありますよね。その時は植物も同じようにダメージを受けているため、サンシェードなどで調整してあげるとよいでしょう」

プランター栽培の場合は庭に比べて管理が必要になりますが、庭のない戸建てでも始めやすい手軽さが大きなメリットと言えるでしょう。

「ベランダに十分なスペースがなくても、壁を利用して立体的に飾ったり、エクステリアを工夫したりすることで、十分に家庭菜園が楽しめますよ」と龍さんはアドバイスしてくださいました。

家庭菜園で、緑のある豊かな暮らしを楽しもう

今回は、これから家庭菜園を始める方に向けて、家庭菜園の始め方や家づくりにおけるポイントを龍さんに伺いました。本格的に家庭菜園を始めたいという方は、家を建てる段階であらかじめ庭のスペースを作っておくとよいですが、ベランダの限られたスペースでも家庭菜園を楽しめます。

「庭でもベランダでも、緑のある暮らしはよいですよ」と龍さんがおっしゃるように、家庭菜園は収穫の喜びがあるだけでなく、小さいお子様への食育や家の中で自然に触れられるというメリットがあります。今回ご紹介したポイントをおさえて、新居で理想の家庭菜園を実現してみてはいかがでしょうか。