人気インテリアスタイリスト・窪川勝哉さん直伝!住宅のインテリア設計のヒケツ

2021年10月30日

家を建てた人もこれから建てることを検討している人も、念願のマイホームでお気に入りのインテリアに囲まれて暮らしたいもの。しかし、見た目ばかりに目が行ってしまうと使い勝手が良くなかったり、逆に機能性だけを求めてオシャレさに欠けるなんてことも。

そこで、各種メディアで活躍中の人気インテリアスタイリスト・窪川勝哉さんにインタビュー。注文住宅のための家具選びのヒケツや注意点を伺いました。

窪川勝哉さんプロフィール

小道具や撮影背景のスタイリングを担うインテリア&プロップスタイリスト。数々のテレビ番組や雑誌のインテリア特集で活躍。ウインドウディスプレイやマンションのモデルルーム、イベントのデコレーションなど空間演出も担う。Instagram

窪川さんが考える注文住宅の魅力

――よろしくお願いします。今回は窪川さんのオフィスにお邪魔していますが、すごく素敵な空間ですね。
「もともとは、日本のモダニズム建築の巨匠である前川國男氏が、昭和30年代に設計した名建築のテラスハウスなんです。現在はほとんどの部屋が利用されていないんですが、数年前に購入してリノベーションしました」

――昭和に建てられたとは思えない、モダンさに目が行ってしまいます。
「ありがとうございます。でも、僕の仕事はあくまでインテリアスタイリスト(家具のスタイリング)で、リノベーションのプロではありません。ここは事前に模型まで作って、綿密に計算をして作り上げたスペースなんです。どこに開口部を作れば光がキレイに入り込むのか、逆に元からある窓をなくすことでどういう印象になるかを検証しました。
自宅を含めて2回リノベを経験したことで、いよいよ僕も家を建てる自信がついてきました」

――窪川さんが考える注文住宅の魅力って何でしょう?
「自分が思うがまま自由度の高い空間にすることができる、でしょうか。リノベだと元ある建物や部屋をベースにして手を加えるので、制約はどうしても出てきてしまいます。構造的にどうしても外すことのできない柱や天井の高さなどは変えることができません。インテリアスタイリストとして入る撮影現場でも、「ここを変えたらもっと良いスペースになるのにな…」と思うことがありますね。

これに対してイチから居住空間を作り上げることができる注文住宅は、窓の位置ひとつとっても基本的には自分の思うように決めることができるし、そもそも家を建てるエリアから選ぶことができます。僕が一番こだわりたいのは、窓で切り取られた景色の見え方。だから土地探しには時間がかかりそうですね(笑)

都心だと建物が密集しがちで、室内に気持ちの良い光の抜けを作ることがどうしても難しいので、郊外に建てるのもいいなって思っています。小田原・真鶴・鎌倉あたりには土地を見に行ったこともあるくらい興味がありますね」

インテリアと建築の関係性

――ずばりどんな家具がおすすめでしょうか?
「そればっかりは個人の好みなので、ひと言ではお話できません(笑)。
ただ、いわゆる一目惚れで家具を決めるのは避けたほうがいいかもしれません。好みが変わることもありますし、トレンドも移ろいでいくものです。服を選ぶように直感で選ばない方が良いと思います。

まず、家はそうそう簡単に建て替えやリノベはできないので、壁材や床材といった空間を構成するインテリアは、ベーシックなものを選ぶことをおすすめします。
ソファやテーブルなどの大物家具を選ぶときも、ベーシックで上質なものをおすすめします。高額な家具を敬遠したくなる気持ちも分かりますが、長く使えるもの、価値が落ちにくいものは、長い目で見てメリットが大きいと思います。

インテリアのトレンドを楽しみたいなら、ファブリックや小物、壁の装飾で取り入れると良いですね。こうした小物で自分らしさを演出することができます。

特に壁は垂直方向に広がって目に入る面積が大きいのに、日本人の場合は壁に絵を飾る習慣がない人が多く、もったいないですね。垂直面のスタイリングという意味では、スタンドライトやグリーンで高さ方向にアクセントを入れるのもおすすめです」

――内装設計は、どういう手順で考えていくべきでしょうか?
「家は家、家具は家具、と分けて考えるのは危険です。家の中に家具を置いて住むわけですから、どこに何を置くかを考えながら家づくりを進めるべきです。実際にそこに住むことを想像して、動線の確保やテイストを決めるといいでしょう。
ソファやダイニングテーブルなど大きなものからレイアウトを決めていくと、失敗が少なくておすすめです。

意外と落とし穴なのがコンセントや照明の位置。どこに何を置くかをしっかり設計せずに位置を決めてしまうと、後からレイアウトの自由度が落ちてしまいます。
図面だけでレイアウトを決めるのも危険。平面で位置を決めたら、それを3Dに想像して動線や目線の邪魔をしていないかをイメージしましょう。住宅メーカーに模型を作ってもらうのも手です」

家具別に選び方のヒケツを整理

ここからは窪川さんに選び方のポイントを家具別に教えてもらいます。
ダイニングテーブルにソファにベッド…。気になるインテリアは特に要チェックです。

ダイニングテーブル&チェア

「好みもありますが、家族が集まるところなのでテーブルは暖かみのある木製がおすすめです。材質や仕上げによっても表情が変わるので、自分がイメージする食卓像に合うものを選んでください。ただし木材を床と全く同じに揃えてしまうと、色が同化し重たい印象になる危険性があります。
あとは、写真のように円形のテーブルもいいと思います。住居って基本的に床も壁も直線で構成されているのですが、その中に円形やアールのあるものをレイアウトしてあげると、デザイン的に洗練された空間になりますよ。

チェアは同じものを人数分そろえてもいいですし、カフェみたいに違うデザインをセレクトするのもこなれていていいですね。異なるチェアで構成する場合は、布地や脚の形を同じにすると自然な統一感を生み出すことができます。

あとは自宅でリモートワークをする人は、テーブルをエクステンションのものにすると作業スペースを確保できて便利です」

ソファ&ソファーテーブル

「インテリアでもソファは一番好みが出る家具なので、気に入るものを選んでください。
あとは当たり前かもしれませんが、長時間座るものなので座り心地にはこだわり抜くべきだと思います。いろいろ試してみて決めましょう。
写真は違いますが、ソファを壁につけずに空間の間仕切りとしてレイアウトする場合は、座面だけでなく背面もデザインされたものを選びましょう。お気に入りのソファを360度から眺められるのも、広い戸建てならではです。

テーブルはどういう使用シーンを想定しているかによって異なります。
食事をしたり座卓としても使う場合は大きめのものを選ぶべきですし、コーヒーを置く程度の場合はサイドテーブルでもいいと思います。ビジュアル的にはテーブルがない方が空間としてスタイリッシュになるので、機能的に必要ないのであればなくてもいいのではないでしょうか」

ラグ・カーテン

「ラグもカーテンも他の家具と比べると安価で、気分やトレンドに合わせて変えやすいインテリアです。
大きな家具をベーシックなものをチョイスしていれば、クセの強い柄物などを選んでも、上手くまとまってくれます。
クリーニングに出せるものなので、季節ごとに変える楽しみ方もありです」(画像協力:ACTUS

照明

「部屋全体を明るい光源のライトで照らすのが一般的ですが、部屋全体がのっぺりとした印象になってしまいます。
おすすめは強くない光源をいろんな場所に複数設置すること。お気に入りの植物や雑貨など目立たせたいものがある場所、もしくは部屋の角や壁を照らすことで空間に陰影を作ることができ、オシャレに見せられる効果があります」

ベッドマット・ベッドフレーム

「マットは高くても寝心地の良いものが一番です。もちろん予算的な制限はあると思いますが、長い年月にわたって使うものなので、投資だと思って寝心地の良いものを吟味して選びましょう。
それに対してデザインの好きなものを選んでOKなのがベッドフレーム 。素材を床材の色味と合わせることで部屋に統一感を出したり、逆に目立たせたい場合は派手なものを選んだり。

あとはベッドカバーやクッションでスタイリングすると、ホテルのベッドのようにサマになりますよ。
柄クッションなら無地のカバーを合わせるなど、くどくなりすぎないようにご注意」

収納家具

「センスがあると自負のある人や飾りたいアートや雑貨がある人は、部屋の目立つ位置に棚を置いて「見せる収納」を楽しみましょう。
逆にセンスに自信がない人は、棚にそのままものを置かず、カゴやボックスに入れて置くことでゴチャつかずにまとまります。閉じている冷蔵庫の中身がわからないのと同じで、情報量を減らしてあげるイメージです」

戸建て新居をもっと好きになれるインテリア選びを

ご自身は戸建てを建てたことはないとのことでしたが、さすがインテリアスタイリスト。みなさんのお家を想像しながら、新居の魅力が増すようなスタイリングの助言をしてくれました。

これから待望の新居を建てる人は、この記事を参考にインテリアを考えつつ、理想の戸建て像を探しに住宅展示場を訪れてみてはいかがでしょうか。きっと家と家具が相乗効果を織り成す新居になるはずです。

Photo_Ikki Fukuda Interview & Text & Edit_Yasushi Shinohara